働き方改革

医療現場の労働問題にアプローチする「働き方改革」とは?

疲れている医療従事者

医療機関の「働き方改革」が施行された経緯・意義

2019年4月より医療機関も含めたすべての職場を対象として、働き方改革関連法の改定、いわゆる「働き方改革」が適用されました。

働き方改革が、医療機関にも施行されたことには大きな意義があります。
というのも多くの医療現場で、長時間労働は問題視されながらも、根本的な解決ができていなかったからです。

しかし、医療従事者も一人の人間であることは言うまでもありません。
特に医療機関では、様々な患者とその疾患に対する繊細な対応が求められる場面が多いものです。
それゆえに、医療従事者の仕事は、もともと大きな負担がかかりやすいものであると言えるでしょう。

また、混雑することが常である医療機関では、受付業務にも大きな負担がかかります。
混雑に対するクレーム対応や診察順番待ち管理の煩雑化、受付業務に追われて他業務が滞るなど、労働環境に問題を抱える医療機関も少なくありません。

このような中で長時間労働が続き、十分な休養と睡眠を得られなければ、当然仕事の生産性は落ちてミスを起こす可能性も高くなります。

働き方改革によって労働環境を整え、医療従事者の負担を減らしていくことは、日本の医療の質を維持していく上で無視することのできない重要な課題です。

医療機関の「働き方改革」概要

医療現場のIT促進による働き方改革

「厚生労働省 第8回 医師の働き方改革に関する検討会 参考資料1」によると、働き方改革の概要として、下記の5つの項目が挙げられています。

  • 残業時間の上限規制
  • 割増賃金率
  • 年次有給休暇取得の義務化・計画的付与
  • 労働時間の状況の把握
  • 産業医

これらの項目は企業規模ごとに順次適用が進んでおり、現在では中小企業における割増賃金率以外は、すべての企業で適用されています。

ちなみに、医療業における「中小企業」とは、企業単位で次の1もしくは2の条件に該当する企業としています。

  1. 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下
  2. 常時使用する労働者の数が100人以下

残業時間の上限規制

残業時間の上限規制として、「原則として月45時間、年360時間等とする罰則付きの上限規制を導入する」とされています。

この対象者に医師が含まれていない点には、注意しましょう。

割増賃金率

割増賃金率は「月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を50%以上とする」とされています。
現在、割増賃金率が適用されているのは中小規模の医療機関に該当しない施設のみとなっており、中小企業規模の医療機関は2023年4月1日から適用されます。

年次有給休暇取得の義務化・計画的付与

年次有給休暇の取得は、すべての医療機関における労働者において義務化されています。
その内容は、「10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年時季指定して与えなければならないとする(労働者が時季指定したり計画的付与したものは除く)」と言うものです。

ここで注目したいのは、有給休暇の時季指定です。
原則として、医療機関側は5日を超えない範囲において有給休暇の取得日を指定し、その日程に合わせて労働者に有給休暇を取らせることができます。
しかし同時に、この指定した日で問題ないか、労働者の意見を聞く必要があります。
そのため、もし労働者が拒否した場合は、その意思を尊重しなくてなりません。

一方で、医療機関側が有給休暇を指定できる「計画的付与」と言うものがあります。
計画的付与も、5日を超える分の年次有給休暇を医療機関側が指定して、労働者に取得させるものです。
しかし計画的付与では、医療機関側が決めた有給休暇の日にちを労働者の希望で変えることができません。
この理由としては、計画的付与を行うためには、事前に労使協定が必要であることが挙げられます。
労使協定であらかじめ決められた内容なので、労働者は医療機関側が指定した日にちに対して拒否することができないのです。

そのため医療機関側の立場としては、「計画的付与」を行う方が、労働者の有給休暇をよりコントロールしやすいと言えます。

労働時間の状況の把握

厚生労働省より「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が公開されており、これによると医療機関側は、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録することとされています。

これはつまり、原則として医療機関が自ら、タイムカードやパソコンの使用時間といった客観的な記録をベースとして、労働者の労働時間の実態を記録しなくてはならないと言うことです。

ここで注意したいのは、自己申告制で労働時間を把握しなければならないケースです。

まず、労働者の自己申告の内容と、パソコンの使用時間などから把握できる在院時間の間に明らかな差がある場合は、実態調査を行い補正をするべきとされています。
さらに、自己申告ができる時間数の上限を決めるなど、適正な自己申告を妨げるような措置をしてはならないことも、ガイドラインに明記されています。

産業医

労働者が50人以上の医療機関においては、医療機関が選定産業医に以下の項目を報告しなくてはならないと規定されています。

1ヶ月あたりの「時間外・休日労働時間」が80時間を超えた労働者の氏名、及びその労働者の超えた労働時間に関する情報、並びに労働者の業務に関する情報で産業医がその労働者の健康管理に必要と認める情報

健康診断実施後の措置等
また、提供された情報をもとに産業医が医療機関側に行う勧告内容は、医療機関により衛生委員会もしくは安全衛生委員会への報告すること、さらにその勧告を受けて行われた措置等を記録し保管することが義務付けられています。

まとめ

働き方改革により、労働者の負担軽減へと舵が切られましたが、実際の医療の現場における仕事内容や量は変わりません。
そのため医療機関におけるさらなる業務の効率化は、早急に取り組むべき今後の重要課題と言えます。

働き方改革を進めるためには、現場に意識付けを求めるだけではなく、病院全体で体系的に取り組んでいくことが必要です。
たとえば、病院業務の中でも課題が多い受付業務では、システム化によって「混雑状況のコントロール」「無駄な業務負担の軽減」など、多くのことを改善することが可能となります。
予約管理システムなどの業務効率化に貢献するツールの活用によって、医療現場における働き方改革をスムーズに進めていきましょう。

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